紅茶鑑定表の見方と5つの指標

紅茶鑑定表の見方と5つの指標
紅茶鑑定表の見方

 さて、このコラムを書いている5月も後半に差し掛かっており、和紅茶は新茶の時期を迎えています。旬の和紅茶の新茶を買おうと思った時、たくさんの種類があって困ってしまうこともあるかと思います。そんなとき、「紅茶鑑定表」が役に立つことがあるかもしれません。レインブラントティーでは、たくさんの和紅茶を取り扱っていますが、それらをどうしたら分かりやすく表現できるかと考え、オリジナルの鑑定表を作成しています。
 今回は、レインブラントティーが作成した紅茶鑑定表について触れてみたいと思います。

紅茶鑑定表の5つの指標

紅茶鑑定表

 レインブラントティーが作成した紅茶鑑定表では、下記の5つの指標を使って、紅茶の特徴を捉えようと試みました。

①香気
②甘味・旨味
③爽快な渋み
④水色
⑤ボディ感

 もちろん、紅茶の鑑定にはもっと様々な指標があり、これはレインブラントティーが使用している「一例」に過ぎません。また、大前提として、紅茶鑑定表は「紅茶の特徴を表すもの」であって、紅茶の品質を評価しません。全ての指標で最高の点数を付ける紅茶が必ずしも「美味しい紅茶」という訳ではなく、実際には飲む人の好みや感じ方によって紅茶の評価というのは大きく左右されますので、あくまで特徴をつかむための参考として、鑑定表をうまく利用していただくのが良いかと思います。
 それでは、この5つの指標が、どのように紅茶の特徴を表しているのか、それぞれ順番に見ていきましょう。

香気

和紅茶の香り
 もともと、お茶の葉には「香りの元」となる成分が含まれており、それらは紅茶の酸化発酵の過程で加水分解されることで、ゲラニオールやリナロールといった様々な香り成分が生成されていきます。主要なものだけでも300種類以上の香気成分が確認されており、それらの香り成分は、ひとつひとつの茶葉ごとに種類も違えば、割合や組み合わせも異なるため、一つとして同じものが無い千差万別の香りを生み出します。
 三井農林社が作成している「紅茶キャラクーホイール」を参照すると、紅茶の香りの大きな表現として、『Green(緑の香り)』『Flowery(花香)』『Fruity(果実様の香り)』『Roast(煎ったような香り)』『Cool(清涼感のある香り)』など、他にもたくさんの紅茶の香りが紹介されています(括弧内は私が勝手に入れた説明ですので、的を得ていないかもしれませんが・・・)。このキャラクターホイールを参考にしながら、レインブラントティーの和紅茶を当てはめていくと、下記のようになります。
分類 一例 特徴
Green さやまみどり1st(お茶の千代乃園) 緑葉
Green おくみどり1st(中窪製茶園) 日本茶
Flowery さやまかおり1st(坂本園) ジャスミン
Flowery やぶきた2nd(牧之原山本園)
Fruity べにふうき2nd(牧之原山本園) 完熟した果実
Fruity べにふうき2nd(知覧心茶堂) ワイン
Sweet べにふうき1st(お茶の千代乃園) スイートポテト
Roast やぶきた1st(お茶のカジハラ) 火香(焙煎香)
Cool べにひかり2nd(ねじめ茶寮) メントール香

 このように、例えば紅茶鑑定表では「香り:5点」と評価していても、紅茶には様々な香りの種類があるため、実際にはどの香りが強いかまでは、鑑定表からは読み取ることができません。香りの特徴については、その茶葉の商品説明をじっくり読んでいくのが良いかと思います。一方で、最初に述べた通り、紅茶の香りには複雑な香り成分が含まれているため、どの香りを強く感じるかは、人によって違ってきます。香りの感じ方にはかなり個人差があり、例えば「完熟した果実の香り」を思い浮かべたとき、香りのイメージも人それぞれだと思いますので、あくまで参考として、実際に自分で飲んでみた時の率直な感じ方と、比べてみるのも面白いのではないでしょうか。
 最後に、一般的な特徴にはなりますが、「甘味・旨味」の強い紅茶は、香りが若干弱くなる傾向があり、両者がトレードオフの関係になっていることが、多々あります。香りが強くないからといって、その紅茶を低く評価してしまうのは早計で、実際にはとても奥深い味わいをもっている紅茶もたくさんあることを、念頭に入れておきましょう。

甘味・旨味

和紅茶の甘味・旨味
 「甘味・旨味」というのは、恐らく、通常の紅茶の鑑定にはあまり使われない指標だと思います。なぜなら、海外の紅茶のほとんどは「爽快な渋み」が特徴となるように作られており、ブロークンタイプの細かい茶葉であればなおさら、短時間でしっかりと濃く抽出されるように作られているため、繊細な「甘味・旨味」を感じることは少ないからです。
 私自身も、以前の職場でセイロンティーを専門に扱っていた当時は、紅茶の「甘味・旨味」に着目することは、実際ほとんどありませんでした。この指標は、和紅茶に触れるようになってからその必要性を感じるようになったもので、和紅茶はもともとが「緑茶用の品種」の茶葉で作られているものも多く、生産者自身も茶葉がもつ「甘味・旨味」を重視しているケースがあるためです。

 特に緑茶品種の「やぶきた」や、「~みどり」と付く品種、あるいは「在来品種」などにおいて、「甘味・旨味」を強く感じられる仕上がりになっているものが多くみられます。日本人にとって緑茶の味はなじみが深く、緑茶に感じるような「ほっとする美味しさ」が和紅茶にも感じられるのは、茶葉に含まれるテアニンを代表とするアミノ酸が、理由の一つとして挙げられます。日本茶のような深い味わいをもった紅茶は、海外から見ればある意味で「邪道」と思われるかもしれませんし、私も最初は海外の紅茶の指標では測り切れない和紅茶に、戸惑った記憶もあります。しかし、逆にこの深い味わいこそが、海外にない国産紅茶のオリジナリティでもあると、最近は考えるようになってきました。

 お茶の栽培を行う際、一般的には、肥料を多く入れるほどアミノ酸の量が多くなり、旨みが強くなります。一方で、香りは弱くなってしまうため、紅茶を作る際は、あまり肥料を使用しない栽培方法が向いている、とされています。そんな中、あえて肥料を投入し、緑茶と同じような栽培方法で紅茶を作り、成功している茶園も存在します。これは、「べにふうき」のような海外産の紅茶にも負けないような、紅茶に強い適性をもった品種を使うのであれば香りは武器となるですが、緑茶用の品種を使って香りで勝負しようと思っても、海外産の紅茶やべにふうきにはなかなか勝てないためです。そこで、敢えて緑茶品種の良さを活かそうとする試みから、こうした考えが生まれてきたのだと思います。

 日本で栽培されている多くは緑茶用の品種であり、日本の本格的な和紅茶作りは、まだ始まったばかりです。こうした「甘味・旨味」を重視する紅茶がもっとたくさん世に出てきて、それらが評価されるようになることは、日本の茶業にとっても、とても大きな意味があるように思います。個人的には、日常使いの紅茶はむしろこうした「甘味・旨味」が感じられる紅茶を愛飲することが多くなっており、用途やシーンによってうまく使い分けができれば、紅茶の楽しみ方はうんと広がるのではないでしょうか。

爽快な渋み

和紅茶の爽快な渋み
 紅茶に感じる、心地よく爽快な渋みは、主にはテアフラビンやテアルビジンなどと呼ばれる紅茶ポリフェノールと、カテキンに由来します。海外の紅茶は、特にこの「渋み」がしっかりと感じられる紅茶が多いのですが、和紅茶に特筆していえば、実は渋みが強い紅茶の割合はそこまで多くありません。むしろ、まろやかでマイルドな香味のものが多いのではないでしょうか。
 その理由の一つとして、茶葉の大きさが「フルリーフタイプ(OP)」の大きい茶葉が多いことが挙げられます。同じ和紅茶も、ブロークンタイプの細かい茶葉に加工すればしっかり渋みが感じられる紅茶になりますので、緑茶品種の「やぶきた」であっても茶葉の形状次第で、意外としっかりと渋みが感じられたりします。ですので、前提として「茶葉の大きさ」で渋みの強さが変わりやすい点と、あとはべにふうき・べにひかりのような「紅茶品種」は渋みが強い傾向があります。また、先ほどの「甘味・旨味」との関連でいえば、旨みの元となるアミノ酸の一種である「テアニン」は、日光によって渋みの元であるカテキンに変化しますので、「渋み」が強い紅茶ほど「甘味・旨味」は弱くなる傾向にあり、両者もトレードオフの関係となっています。

 海外の紅茶の場合、ダージリンのような高級な産地ほど、茶葉の等級(大きさ)はフルリーフタイプの大きいものが多く、大量生産の短時間で早く抽出するような用途の紅茶ほど、茶葉のサイズは細かくなります。日本の紅茶の生産量は、海外と比較すれば決して多いものではなく、少量生産で高品質を目指すダージリンのような生産方式が日本には合致しており、そのため、品質にこだわったフルリーフタイプの和紅茶には、一定の合理性があります。もし、フルリーフタイプの和紅茶で「渋み」が強いものを選びたいときは、「べにふうき」のような紅茶品種を選択すれば、間違いはないでしょう。
 また、どうしてもお気に入りの和紅茶の渋みを強くしたい場合は、グラインダーや包丁などで細かく刻み、100℃にできるだけ近い高温で抽出し、蒸らし時間はティーコジーなどを使って80℃以上の高温を維持すれば、同じ茶葉でも、より渋みを強く出すことができます。少しもったいない気もしますが、ミルクティーにしたい場合などは、細かい茶葉の方がより相性が良くなりますので、そのようなひと手間を加えるのも一つの手といえます。

水色

和紅茶の水色
 水色(すいしょく)は、紅茶の色味のことを指し、この指標についてもこれまでの例に漏れず、色が濃いものほど良い、薄いのは良くない、という単純な解釈とはいきません。紅茶の水色については、酸化発酵の度合いが大きく関係している、と言えます。
 まず、紅茶も緑茶も、元は同じ茶葉で作られているというのは、有名な話かと思います。収穫された後、もともと緑色だった茶葉は、「酸化発酵」の過程を経て、だんだんと色が赤茶色から赤黒い色へと変化していきます。この間に、茶葉の中では、もともと茶葉中に多く含まれていたカテキン類(無色無臭)が重合して結びつき、別のテアフラビン(赤みを帯びたオレンジ色)という物質へ、さらに重合してテアルビジン(赤褐色)へと変化していきます。これらの、発酵の過程で生まれたテアフラビンやテアルビジンといった紅茶ポリフェノールが、紅茶の赤色を生み出していたというわけです。

 テアフラビンやテアルビジンが生成される過程では、カテキンが消費されますので、結果として紅茶に含まれるカテキンの量は、最終的に全体の8~10%(緑茶では約70%)程度まで減ってしまいます。さて、紅茶であれば何となく、深い紅色をしたものの方が美味しいのでは、とイメージしてしまうかもしれませんが、意外にも世界の紅茶に目を向ければ、必ずしもそうとも言い切れません。
 例えば、スリランカの高地で採れるヌワラエリヤや、ダージリンのファーストフラッシュなどでは、紅茶の発酵度合いは低く、水色は淡く透き通ったオレンジ色を呈します。全体の組成から見てもカテキン類が多く、テアルビジンのような発酵の後の段階で生成される紅茶ポリフェノール類は少なくなります。つまり、今世にある紅茶を見渡しても、必ずしも「赤い紅茶」だけが美味しいと評価されているわけではなく、水色の淡い紅茶もきちんと高級品として評価されているというのが、ここでの重要なポイントとなります。

 和紅茶に関して言えば、主に「発酵度合い」と同時に、「品種」によっても水色が大きく左右されます。これは想像に難くないと思いますが、一般的にやぶきたなどの「緑茶品種」では水色は淡く、べにふうきなどの「紅茶品種」ではしっかりした濃い紅色を呈します。先に述べた通り、世界には水色が淡くとも高級品として評価されている紅茶はたくさんありますので、水色は「味」や「香り」の特徴をおおまかにつかむための指標とするのが、良いように思います。
 紅茶の水色が黄色やオレンジ味がかった淡いものは、それだけ発酵の度合いが低くなりますので、緑茶にも似たグリニッシュさがあり、香りも味もキレがあり爽快さを感じさせ、ストレートティー向きです。一方、濃い紅色を呈す紅茶は、発酵がきちんと進んでおり、強い渋みとボディ感を感じさせ、ミルクティーとも相性が良い特徴を持つようになります。これら水色の特徴をもとに、好みのテイストの紅茶を選ぶ際の参考にしてみるのも、良いと思います。

ボディ感

和紅茶のボディ感
 最後に、「ボディ感」についての説明をしていきます。これは、あまり一般的な表現ではないと思いますが、これまで挙げてきた4つの指標だけでは、どうしても説明しきれない紅茶の特徴を「ボディ感」で表現しようと考え、指標の一つに加えることにした経緯があります。
 「ボディ」自体は、主にワインを表現する際に使われる言葉ですが、大枠の意味合いに関しては、ほとんど同じと捉えていただいて構いません。ワインと紅茶は、様々なシーンで同列に数えられることが多く、ワインの表現は、紅茶の表現にとても役に立つことが多々あります。この「ボディ」も、そのうちの一つと言えます。紅茶の業界では、そこまでメジャーではないかもしれませんが、しばしば使われている表現です。

 「ボディ」が表すものとしては、一般には味に関わる「コク」や「密度」、そして色合いや香りなども含めた、感じ方の総合点を「ボディ」として評価しており、何か一つの特徴を示したものではないことが分かります。紅茶を表現しようと思った際に、味や香りといった個々の特徴ではなく、紅茶を飲んだ時に感じる「重厚感」や全体の「強さ」が重要で、総合的な評価基準を「ボディ」という言葉で表しています。特に、味・香り・水色の3拍子をバランスよく備え、発酵度合いも強く、飲んだ時に「飲みごたえ」をしっかりと感じさせる紅茶は、「フルボディ」と呼ばれています。

 「ボディ感」があるかないかは、紅茶を判断する際に、どのように考えれば良いのでしょうか。一つの考え方としては、「ミルクティー向きかどうか」を判断する際に、参考にすることができます。基本的に、発酵度合いの弱い紅茶は、ミルクを入れると味や香りがミルクに負けてしまい、紅茶の繊細な味わいを損なってしまいます。一方、味・香り・水色の3拍子を備えた「フルボディ」の紅茶はミルクととても相性がよく、ストレートでは強すぎる場合も、ミルクを加えることで飲みやすく、また紅茶を何倍にも美味しくしてくれます。

 和紅茶では、やはり紅茶適性が高いべにふうきなどでは、ボディ感の強い紅茶が出来やすくなります。一方で、緑茶品種では味と香りは良いが水色が弱かったり、味・香り・水色のバランスは良いが、全体の奥行きを引き出す「渋み」が足りなかったりと、総合的に見るとボディ感は弱~中程度で落ち着きやすい傾向があります。このボディ感については、完全に個々人の「好み」となりますので、嗜好に合わせて選ぶのが良いと思います。個人的な経験からも、「紅茶は強いものでないと満足できない」という方と、「あまりに強いと飲めない」という方は、ちょうど半々くらいなのではないかと思っています。

レインブラントティーの紅茶鑑定表

紅茶鑑定表

 以上、今回はレインブラントティーの紅茶鑑定表の5つの指標について、説明をしてきました。レインブラントティーでは、①香気、②甘味・旨味、③爽快な渋み、④水色、⑤ボディ感の5つの指標を見ていけば、その紅茶がもつおおまかな特徴をつかむことができると考えており、それら各指標を5段階で示しています。
 繰り返しにはなりますが、鑑定表はあくまで「紅茶の特徴を表すもの」であって、紅茶に点数を付けるためのものではありません。その上で、鑑定表をうまく使いながら、自分の好みに合った紅茶を見つけるための手助けとして利用して頂ければと思います。
 最終的に、その紅茶の特徴を理解しようと思えば、実際に飲んでみるまでは本当のことは分からないのだと思います。ただ、今の世の中の消費形態を考えたときに、インターネットで得た情報を頼りに紅茶を購入して、遠隔地にまでお届けが出来る時代です。紅茶を飲む前の事前情報の段階で、何とか紅茶の特徴を分かりやすく理解していただける方法がないかと考え、一つ一つの紅茶にこうした鑑定表を作成しています。この5つの指標とレインブラントティーの紅茶鑑定表が、実際に紅茶を選ぶ際の、何かの参考になれれば幸いです。

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