和紅茶の収穫シーズン(ファーストフラッシュ・セカンドフラッシュなど)

和紅茶の収穫シーズン(ファーストフラッシュ・セカンドフラッシュなど)
和紅茶の収穫シーズン
 和紅茶に限らず、紅茶を選ぶ際にはよく商品名に「ファーストフラッシュ(=以後「1st」)や「セカンドフラッシュ(=以後「2nd」)と表記されているのを見かけます。レインブラントティーの和紅茶にも、このような表現をたくさん使っています。主には、インドで生産されるダージリンやアッサムなどに使われるこの言葉は、紅茶の収穫シーズンのことを示しており、その年の最初に収穫された茶葉を「ファーストフラッシュ」、同じ年の二番目に収穫された茶葉を「セカンドフラッシュ」と呼ぶことで、品質の違いを区別しています。今回は、こうした表現が日本の和紅茶に使用される際、どのような意味をもつのかをまとめてみたいと思います。

日本と世界の収穫シーズンの違い

日本と世界の収穫シーズンの違い
 日本の話をする前に、もう少し海外のことに触れておきたいと思います。例えば、スリランカなどでは、1stや2ndといった表現は存在しません。スリランカでは、赤道に近く一年中紅茶の収穫が可能なため、特に品質の高い紅茶ができる乾季のシーズンを「クオリティシーズン」として表現しています(細かく言えば、収量の多くなる雨期を「ベストシーズン」、クオリティシーズンの中でも最優良の時期を「ピーククオリティシーズン」と呼んだりもします)。つまり、こうした表現は必ずしも全ての紅茶に当てはまるものではないことが分かります。

  そのため、1stや2ndといった表現は緯度が高く冬季があるために、茶葉の休眠期が必要な国に限られる、ということになります。一年に収穫できる回数に限りがあるために、1stや2ndといった表現を使って、どんな時期に収穫されて、どのような特徴があるのかを消費者に分かりやすく伝えるために用いられています。そして、当然ながら国や地域ごとに気候条件は異なりますので、日本とインド、さらには静岡とダージリンでは、必然的に1stや2ndの示す意味にも違いが生じることになります。

  1stや2ndと聞いて、すぐにダージリンが思い浮かぶ方はなかなかの紅茶通だと思いますが、ダージリンの1stと2nd、さらには秋摘みのAutumnalでは、それぞれの特徴に大きな違いがあり、消費者にも共有されている「一定のイメージ」があります。例えば、ダージリン1stは発酵度が低く非常にグリニッシュで緑茶にも近しい味わい、ダージリン2ndはボディ感が増し特有のマスカテルフレーバーを呈するものがある、といった特徴です。日本の場合も、1stはややグリニッシュであったり、2ndはより強い発酵度合いを示したりと、大枠の特徴としてはダージリンと同様に考えて良い部分はあるものの、日本独自の事情もあるため、ここからは日本のことを、もう少し詳しくみていきたいと思います。

一番茶、二番茶との違いは?

一番茶、二番茶との違いは?
 日本では、緑茶のことを「一番茶」や「二番茶」といって表現するのをよく耳にします。意味合いは1stや2ndと同じで、その年の最初に採れた茶葉を「一番茶」、二番目を「二番茶」と呼んでいるため、1stと一番茶、2ndと二番茶は同義となります。
  さらに、「春摘み」や「夏摘み」という言葉も、聞いたことがあるかもしれません。「春摘み」も「ファーストフラッシュ」「一番茶」と同じ意味で使用されていますので、同様に、「夏摘み」は「セカンドフラッシュ」「二番茶」と同義です。
  これをまとめると、以下のようになります。

●ファーストフラッシュ(First Flush=1st) = 一番茶 = 春摘み
●セカンドフラッシュ(Second Flush=2nd) = 二番茶 = 夏摘み
●オータムナル(Autumnal) = 三番茶 = 秋摘み

  実際には、気候の温暖な鹿児島県などは、一番茶が他県よりもずっと早い(4月上旬~下旬)ため「三番茶=秋摘み」とはならず、必ずしも上記の通りではない場合もありますが、おおまかにはこのように考えるとわかりやすいかと思います。

ファーストフラッシュは新茶?

ファーストフラッシュは新茶?
 さらに日本では「新茶」という言葉もよく使われます。当然、「新茶」は「一番茶」と同じ意味なため、「ファーストフラッシュ」とも同義となりますが、日本の「新茶」には少し別の解釈が含まれます。主には「緑茶」に当てはまることですが、日本全体で考えた場合に「日本で最も早く収穫・販売されたお茶=新茶」という捉え方があることです。

和紅茶と緑茶の「新茶」の捉え方

  上述の通り、九州南端の鹿児島県では、4月上旬から新茶の収穫が可能で、早い場所では3月下旬から収穫が始まるそうです。他県では4月下旬から5月下旬までが一般的であり、一番茶のシーズンにも幅があるため、定義でいえば同じ「新茶」なのですが、販売時期が遅れれば遅れるほどその緑茶は「新茶」としては扱ってもらえず、新茶としての値も付かない、という問題があります。

  これは「捉え方」の問題になりますので、”和紅茶”の場合には「早いほど良い」という考え方はそこまで根強く浸透しているわけではなく、「新茶の時期」と「価格」との間にそこまで深い相関関係は見受けられません。和紅茶にとって価格に特に強い影響を及ぼすのは、「品質(と栽培方法)」と「希少価値」、そして「茶園のブランド力」です。仮に、茶園ごとの販売時期に差異があったとしても、「ここの茶園の新茶が欲しい!」と思っている和紅茶ファンにとってしてみれば、1stだけでなくそれ以降の紅茶も、その茶園の「広義の新茶」として捉えている可能性があります。つまり、その紅茶が夏摘みや秋摘みであったとしても、『〇〇茶園の「新しい紅茶=新茶」が登場した』といったイメージを抱いているケースも多々あるかもしれない、ということです。

  まだまだ和紅茶は数が少なく、優秀で品質の高い茶園は、すぐに市場でも名が知れ渡ります。そのため、和紅茶は大半が「茶園」でブランディングされていると言っても過言ではなく、そうした点に、和紅茶と緑茶の違いを見ることができます。「茶園」の影響が大きい和紅茶にとっては、新茶のシーズンから大きく外れなければ、「ファーストフラッシュ=新茶」のイメージは、緑茶よりも比較的近しいもののように感じることができます。一方で緑茶の場合には、「一番茶」と「新茶」との間に確かなギャップが存在していることには、留意する必要があるかもしれません。

早いほど価値がある紅茶

セイロンのフレッシュティー

  これまで述べてきたことと、全く逆のことを述べることになりますが、紅茶にも早いことに価値が生まれるケースがあります。特に海外の、それもセイロンティーの専門店などの場合は、「新しく入荷した紅茶=新茶」と呼んだりする場合があることです。「スリランカのウバから8月の新茶が届いたよ!」といった感じの表現です。この場合、「新茶」とは「その年の最初の新芽で作った紅茶」という意味ではなく、その時期ごとに新しく入荷した「フレッシュティー」という意味が込められています。

  茶葉の形状が細かいブロークンタイプのものが多いセイロンティーは、フルリーフのそれと比べて、時間経過による変化が大きいというのは、筆者自身がセイロンティーの専門店に勤めた経験からも、ある程度事実だと思います。スリランカでは、各茶産地に設けられた製茶工場で、その地域に適した紅茶の香味が調整されており、高地のヌワラエリヤでは発酵度の低いグリニッシュな味わい、低地のルフナでは発酵度が強くスモーキーな味わいといったように、工場のファクトリーマネージャーが最終的な紅茶の香味を決定し、世界各地へ出荷が行われています。そのため、せっかく熟練のマネージャーにより入念なテイスティングが行われ、香味や味わいが調整された紅茶があるなら、その紅茶をできるだけ最短で仕入れ、可能な限り現地と同じ「フレッシュ」な状態で飲んで欲しいという紅茶ディーラー達の思いが、「フレッシュティー」という考え方や提供方法を日本に浸透させてきたのだと思います。

  品質の変化の速いブロークンタイプと異なり、フルリーフの茶葉が多い和紅茶では、スリランカの「フレッシュティー」とは逆に「ヴィンテージティー」という考え方が、近年確立しつつあります。敢えて「ゆっくりと」熟成させることで、マイルドに変化した香味を楽しもうとする試みです。こうした、「フレッシュティー」と「ヴィンテージティー」、そして「ブロークンタイプ」と「フルリーフタイプ」の対比なども、紅茶の奥深さを実感できる引き出しの一つだと思います。これほど真逆のテーマで議論を交わすことができるというのも、紅茶の面白いところではないでしょうか。

和紅茶の収穫シーズン

 それでは、日本の収穫シーズンをそれぞれ紹介していきたいと思います。日本で紅茶が作られる時期は主に年3回ありますが、基本的には一番茶のみか夏摘みの二番茶までしか作らない場合が多く、秋摘みやそれ以降に収穫されるシーズンティーは稀です。

和紅茶のファーストフラッシュ(First Flush/一番茶/春摘み)

時期:4月下旬~5月上旬
特徴:グリニッシュで爽快な香味

  その年に最も早く出た新芽で作られた紅茶です。4月~5月初旬では気温がそこまで高くないため、紅茶の酸化発酵は緩やかに進み、グリニッシュで爽快な香味になりやすい特徴があります。

  また気温だけでなく、一番茶は紅茶ポリフェノールの元となるカテキン類の含有量が少ないために、紅茶への酸化発酵が進みにくいという点も挙げられます。根から吸い上げられたアミノ酸の一種であるテアニンは、茶の新芽に移動した後、日光によってカテキンに変化します。そのため、日照時間が長い二番茶や三番茶の方が一番茶よりもカテキンの含有量が多く、紅茶の製造には適してます。一番茶のカテキン量が少ない性質を最大限に利用したのが「玉露」であり、新芽に覆いをして日光を遮ることでカテキンの生成を抑え、テアニンの含有量を増やすことで、旨みがあり渋みが少ないお茶を作ることができます。
  和紅茶の場合も、ダージリンのファーストフラッシュほどではありませんが、二番茶で作られた紅茶と比べて相対的にフレッシュな香味を呈するものが多いため、爽快な香味を楽しみたい方におすすめです。

和紅茶のセカンドフラッシュ(Second Flush/二番茶/夏摘み)

時期:6月中旬~7月中旬(一番茶から45~50日後)
特徴:渋みがあり、ボディ感の強い香味

  6月中下旬から7月にかけて生産され、日本では二番茶が特に紅茶加工に向いているとされています。この時期は気温も高く、紅茶の酸化発酵もしっかりと進むため、紅茶の味・香り・水色の3拍子がそろった、フルボディの紅茶が出来やすくなります。カテキン量の多い夏の茶葉は、紅茶特有の紅色も濃くなるため、春に比べて渋みも十分に感じられる、しっかりとした紅茶になる傾向があります。

  紅茶ポリフェノールであるテアフラビンやテアルビジンは、カテキン類が重合することによって生成され、紅茶らしい渋みの感じ方や水色に影響しています。夏摘みの紅茶はカテキン類の中でも特にエステル型カテキン(エピカテキンガレート(ECG),エピガロカテキンガレート(EGCG))の含有量が多くなるため、渋みを強く感じるテアフラビン類を多く生成することができます。そのため、紅茶らしいしっかりとした渋みとボディ感を味わいたい方には、この時期の紅茶がおすすめです。

  また実際には、カテキンの含有量が多いというのは、”発酵度の強い紅茶を作ることができる”という前提条件に過ぎません。最近の和紅茶は発酵度が比較的浅く香り高いものが好まれていることもあり、夏摘みの紅茶であっても、茶園の趣向や品種特製を引き出す目的でグリニッシュな仕上がりとなっている場合も、多々見受けられます。そのため、最終的には茶園ごとの特徴を踏まえてチョイスするのが良いでしょう。

和紅茶のオータムナル(Autumnal/三番茶/秋摘み)

時期:7月下旬~8月下旬(二番茶から35~40日後)
特徴:全体的にマイルドな香味で飲みやすい

  地域により、収穫される時期は若干異なりますが、夏から秋にかけて収穫された茶葉で作られる紅茶です。この時期の茶葉を摘んでしまうと、翌年以降の一番茶の品質や収量、収穫時期に影響を及ぼすことがあるため、三番茶は摘採しないという茶園も多くあります。紅茶の特徴としては、年間を通じて最もマイルドで、特にもともとの個性が強い茶葉(べにふうきなど)で作られた紅茶はほど良い仕上がり具合となり、紅茶が苦手という方にもおすすめできるシーズンティーとなります。

  ただし、実際には秋摘みの紅茶を作っている茶園自体が多くないため、香味の特徴はその茶園や品種ごとに異なり、総じて特徴を述べるのが難しい紅茶でもあります。なかなかお目にかかれない紅茶ということもありますので、特徴で選ぶというより、その出会いを楽しむというスタンスで臨む方が良いのかもしれません。もし見かけたら、ぜひ積極的にチャレンジしてみていただきたいと思います。

収穫シーズンから見た和紅茶(まとめ)

 いかがだったでしょうか。普段よく目にするものの、あまり話題に上らない「収穫シーズン」という切り口で和紅茶を眺めることも、時に新鮮で面白い発見につながることがあります。特に、日本では緑茶生産が主流であり、和紅茶専業というケースは非常に稀であるため、和紅茶を考える際も必ず「緑茶」の話がついてまわり、そこには切っても切り離せない関係性が顕在しています。和紅茶の収穫期から「日本のお茶作り」を見てみるというのも、面白い視点かもしれません。

  また、収穫シーズンが及ぼす影響力については、現状の和紅茶に関して言えば、ダージリンほど収穫シーズンによる「共通の特徴」というものは存在していません。今回述べた「和紅茶の収穫シーズンごとの特徴」も、大枠としての切り口に他ならず、和紅茶の特徴を決定付けているのは、「地域性」・「品種」・「栽培方法」・「製法」などの要素から受ける影響が、より大きい、というのが実情です。しかし、和紅茶の市場が伸び続ける限り、和紅茶と緑茶の関係性は今後も間違いなく変化していくと予想されますし、和紅茶の収穫シーズンにも、もっと大きな意味が生まれるかもしれません。今後も、まだまだ変化する和紅茶の市場からは、目が離せませんね。

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